では、次の2つの例文にはどのような違いがあるかご存知でしょうか。
- I heard that George passed the entrance exam of that university.
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I heard George(‘s) passing the entrance exam of that university.
どちらも「ジョージがあの大学に合格した。」と和訳できますが、そのニュアンスにはどのような違いがあるのでしょうか。
「どっちも和訳すれば同じなんだから、そこまで気にする必要はないんじゃない?」
確かに和訳の上では同じです。
しかし、厳しいことを言えば、もしあなたが「英語をビジネスレベルで使いたい」「MBAなどの学位を取って海外で働きたい」「海外の人と高いレベルで議論したい」と考えているならば、このくらいのニュアンスは身につけて当然です。
ということで、今回は使役・知覚系動詞とthat節の有無によるニュアンスの違いについて解説します。
少し難しい内容かもしれませんが、ぜひ身につけていただければと思います。。
目次
【文法上の距離】である動詞・目的語(VO)間に注目
私、「ニュアンスの違いは文法上の距離で生じる」ということを何度も言ってきました。
「【文法上の距離】によって生じるニュアンスの違い」については他の記事でもご紹介しておりますので、まだ見ていないという方はこちらをどうぞ。
今回取り上げる【文法上の距離】についてのポイントはこちらです。
that節が無い → 直接的関与・根拠を基にした表現
that節が有り → 間接的関与・根拠を基にした表現
それでは、知覚動詞・使役動詞のそれぞれについてそのニュアンスの違いを見ていきましょう。
知覚動詞とthat節
さて、毎度恒例ですが、「クレヨンしんちゃん」を題材にした例文です。
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Masao-kun heard that Nene-chan was punching her stuffed animal of a rabbit behind that tree.
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Masao-kun heard Nene-chan punching her stuffed animal of a rabbit behind that tree.
はい。どちらも、「マサオくんはネネちゃんがあの木の裏で、ウサギの人形を殴っているのを聞いちゃった」ですね。
(I.)の例文では、「Masao-kun heard || that || Nene-chan was punching ~」と、「that」により前半(I heard)と後半(Nene-chan was punching ~)に1語分の距離が生まれていますね。
この【文法上の距離】によって、この英語表現が間接的根拠に基づいている文章なんだと判断できるのです。
具体的にどういった状況なのか考えてみましょう。
例えば、マサオくんは直接ネネちゃんがウサギの人形を殴っているのを聞いたわけではないが、人づてにその様子のことを聞いた、といったような状況が考えられます。
ですので、和訳するのであれば、「マサオくんは(直接聞いたわけではないけど、聞いた話では)ネネちゃんがあの木の裏でウサギの人形を殴っているらしいと聞いた」となります。
(II.)の例文では、「that」がありません。
つまり、前半(Masao-kun heard)と後半(Nene-chan punching)の間には【文法上の距離】全くありません。
ですので、thatのない(II.)の英語表現は直接的根拠に基づいた文章であると判断できます。
つまり、マサオくんは実際にネネちゃんがウサギの人形を殴っている音を耳にしたということです。
マサオくんが本当に怖がっていそうな様子が伺えるのは、(II.)の例文の方なのではないでしょうか。
ただの噂で判断しているのか、それとも、直接その音を聞いてしまったのか、そのどちらかで考えれば、マサオくんの顔の引きつり具合が勝っているのかは想像に難くないでしょう。
使役動詞とthat節
今回取り上げる使役動詞についてですが、高校で習う範囲で指す狭義の使役動詞として「have, make, let, get」に加え、広義の使役動詞「compel, allow, oblige, order」なども対象としています。
広義の使役動詞(compel, allow, orderなど)について
まずは広義の使役動詞の中から「order」を取り上げてみましょう。
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Misae ordered Hiroshi to clean the living room.
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Misae ordered that Hiroshi (should) clean the living room.
どちらの例文も「ミサエはヒロシにリビングをきれいにするように頼んだ」となりますね。
では、(I.)の例文はどうでしょうか。
thatもないので、動詞と目的語の文法上の距離はゼロですね。
ということは、ミサエは直接ヒロシに声をかけてお願いをしたということになります。
(II.)の例文ではthatがあります。
動詞のorderと目的語に当たる「Hiroshi (should) clean ~」には1語分の距離があります。
なので、ミサエは直接宏に声をかけているわけではなく、間接的にお願いをしたということです。
例えば、ミサエがしんちゃんに「ヒロシにリビングを掃除するように言って」と伝え、その後、しんちゃんがヒロシに「『リビングルームを掃除して』って言ってたよ」と伝えるような状況が考えられるでしょうか。
狭義の使役動詞(have, make, let, get)について
次の例文を見てみましょう。
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Misae made Himawari sit on the chiar.
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Misae sat Himawari on the chair.
どちらも和訳は「ミサエはひまわりを椅子に座らせた」となりますね。
さて、今回はthatがありません。
ですので、【文法上の距離】については「thatの有無」ではなく、別の判断軸を使いましょう。
とは言っても難しくはありません。
(I.)の例文は、どのように考えれば良いのでしょうか。
まずは結論から言ってしまいます。
(I.)は間接的関与を表現した文章になります。
今回の場合、直接的か間接的なのかを判断する軸として、「その文が完全か不完全か」で判断します。
(I.)の場合、動詞がmake、目的語がHimawariですが、「Misae made Himawari」と表現してもどのような意味なのかイマイチよく分かりません。
なので、この例文はsit(座る)という動詞が来て初めて成立する文章という意味で不完全な例文であると判断します。
その不完全さから、(I.)の例文は間接的であると判断することになります。
ここでいう間接的とは、「座りなさい」とヒマワリに声をかけることによって座らせたという意味になります。
一方、(II.)の例文は直接的関与を表現しています。
実際に直接自らの手でひまわりを椅子に座らせた状況を表現している際にふさわしい文章になります。
まとめ
では、まとめに入ります。
【thatの有無】
that 有 → 間接的関与・根拠を表現
that 無 → 直接的関与・根拠を表現
【文章が完全か不完全か】
動詞と目的語のみでも意味が通る文章 → 直接的関与・根拠を表現
動詞と目的語のみでは意味が通らない(=もう一つ動詞を足す必要がある)文章 → 間接的関与・根拠を表現
今回も非常に細かいかもしれませんが、英語のニュアンスについて解説いたしました。
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