突然ですが、以下の英文の違いは分かりますか?
- The man got very angry before he kicked the bucket.
-
The man got very angry before he kicked at the bucket.
赤の箇所が2つの英文の文法上の違いですが、意味上ではどのような違いがあるのでしょうか。
もし、この違いが分かるようでしたら、あなたはネイティブの英語感覚に近づいています。
でも、それが「なんとなく分かる」では意味がありません。
この違いが明確に分かっているかどうかで、あなたが書ける英文の質は大きく変わります。
そこで、今回は「動詞+前置詞+目的語」(以下、「V+前置詞+O」とする)と「動詞+目的語」(以下、「V+O」とする)の違いについて解説します。
目次
「V+O」は直接的、「V+前置詞+O」は間接的
まず「V+O」と「V+前置詞+O」の違いについて、端的に言えば以下のような違いがあることを確認してください。
「V+O」⇒ 動詞の影響が直接的に目的語に及んでいる
「V+前置詞+O」⇒ 動詞の影響が間接的に目的語に及んでいる
この説明だけではよく分からないと思うので、以下の例文を通して理解を深めましょう。
- Nene-chan punched Masao-kun.
- Nene-chan punched at Masao-kun.
(I)について、ネネちゃんの「殴った(punched)」の影響が直接的にマサオ君に及んでいることが分かります。
ネネちゃんの拳は直接マサオ君に当たったんですね。
つまり、ネネちゃんは実際にマサオ君を殴ったことが含意されています。
それに対して、(II)はどうでしょうか。
(II)については、ネネちゃんの「殴った(punched)」の影響が間接的にマサオ君に及んでいることが分かります。
ネネちゃんの拳はマサオ君には直接は当たってはいませんね。
つまり、ネネちゃんは拳を振り上げマサオ君に向かったが、実際に殴るまでには及んでいないことが含意されています。
ただネネちゃんは拳をマサオ君に振り上げただけということなんですね。
この2つの英文の違いは前置詞の有無にすぎませんが、そのニュアンスの違いはとても大きなものです。
読み手からしてみれば、(I)を読んだ方は「ネネちゃんはマサオ君を殴る残忍な奴だ。」と感想を持ち、(II)を読んだ方は「ネネちゃんは拳を振り上げるほどに怒ってはいたが、結局は殴ることはなかった奴だ。」と感想を持つかもしれません。
さらに、もう一つ深堀りしてみましょう。
以下の2つの英文のうち、自然な分はどちらでしょうか。
- Nene-chan punched Masao-kun, but she failed it.
- Nene-chan punched at Masao-kun, but she failed it.
“, but she failed it.(しかし、殴れなかった)”を追加してみましたが、ここまで読んだ方ならどちらが自然なのかわかるでしょう。
正しいのは、(II)ですね。
(I)では「ネネちゃんが実際にマサオ君を殴ってしまっている」ので、その流れで「殴れなかった」というのは矛盾しています。
「V+O」は「完遂」、「V+前置詞+O」は「意図・試み」
Ichiro catch the baseball.
「イチローは野球ボールを捕球した」となります。
ボールが飛んできて、しっかりとグローブに収まるまでを表現しているんですね。
ですので、「野球ボールを手にすること」を完遂したことを含意します。
A drowing man will catch at a straw.
この文章はことわざで「溺れる者はわらをも掴む」となりますが、catch atは「つかもうとする」意図・試みを含意します。
必ずしも、「わらを掴むこと」までは含意しておらず、「わらを掴む」手前まで行為が及んだことを含意しています。
つまり、「わらを掴む」ことは無かったということです。
ですので、この例文を厳密に和訳するならば、「溺れかけた者はわらをも掴もうとする」となります。
以上を踏まえれば、「V+前置詞+O」はVが間接的にOに影響を与えるに過ぎない傾向から、「V+at+O」で「~しようとする」という「意図・試み」の意味を含意することが分かります。(※1,※2)
(※1)全ての動詞に対して「V+at+O」が「~しようとする」という意味を表すとは限りません。この形で使える動詞はbeat,strike,kickなどの「打撃」関連、cut, chop, hackなどの「切断」関連の動詞に限定されます。
(※2)一般に”at”を従える動詞は、「動詞が意味する行為の結果、目的語に接触する」意味を持つ動詞といわれています。
前置詞の有無によるVO間距離の違いの影響とは
ここまで、「V+O」と「V+前置詞+O」の意味上の違いを説明してきましたが、根本に話を戻しましょう。
「V+O」と「V+前置詞+O」の違いで、誰にでもわかる大きな違いって何でしょうか。
そうです。前置詞が有るか無いかですね。
「そんな当たり前のこと言うなよ。(笑)」
となるかもしれませんが、この違いって意外と重要なんです。
単純な文法上の違いではありますが、この違いによって生じるもう一つの大きな違いは何でしょうか。
それは「動詞と目的語の間の距離」です。
この距離の違いによって、VとOの関係が直接的なのか間接的なのか、分かれてきます。
私がここで特に言いたいのは、「文法上の距離感」の影響って今回だけに限らず他の場面でも当てはまることなんだということです。
後日、この距離感によって生じる影響について記事を書きます。
まとめ
以上をまとめてみましょう。
「V+O」はVの影響がOに直接的に及ぼしていることを表す。
「V+O」は「完遂」を意味する。
「V+前置詞+O」はVの影響がOに間接的に及ぼしていることを表す。
「V+前置詞+O」は「~しようとする」という「意図・試み」を意味する。
今回の記事は少し細かいニュアンスについてまとめてみましたが、このようなニュアンスの違いを理解することで少しずつ英語の感覚を身につけることができます。
日常会話であればほとんど気にする必要はありませんが、ビジネスの現場などお堅い状況の中でネイティブの方と対等に渡り合うためにはこのような英語感覚を持つことは非常に武器になります。
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